現時点で最新刊が62巻のマンガ『キングダム』ですが、数か月前からAmazonPrimeでアニメ版を見始め、その後は何度かマンガ喫茶に通ってようやく全て読み切りました!!
疲れた~~
この『キングダム』ですが、秦の始皇帝が中国を統一するまでの、各国武将たちの熱い戦いが描かれたマンガでとても高い人気があります。
今まで、なんでこんなに人気があるのか分かりませんでした。(今は、まだ腑に落ちない部分はあるものの、人気の理由はなんとなく分かった気がします。)
僕は1冊も読んでいない段階から毛嫌いしてしまっていて、作品を見始めるまでにかなり時間がかかりました。
毛嫌いしてた理由は主に3つ。
1.絵が嫌い
2.昔世界史で習った始皇帝は極悪非道の暴君だったから、好きになれるわけない
3.そもそも殺し合いが続くマンガが好きになれるわけない
1.については、調べてみるとそれなりに同意する人は多そうですね。
具体的に絵のどこが嫌いかと言われると表現しづらいのですが、僕が好きな『はじめの一歩』や『ROOKIES』とかと比べると、絵に躍動感がないというかかっこよく見えないんですよね〜
ただ、Wikipedia読むとスラムダンクの井上雄彦先生にも絵については指摘されてたらしく、マンガでいうと4巻目あたりから絵は変わってきてるらしい。
「黒目を大きくするように」って指摘だったとか。
この指摘以降、重点をストーリーから絵に移したとのこと。
当初は人気が出ず、それで歴史も勉強しなおすなど苦闘して、いいものを描いている自信があった。しかし、アンケートで最下位になり、連載打ち切りの候補になった。行き詰って、それで以前、アシスタントをしていて師匠と仰ぐ井上雄彦に相談すると一言「話はこれでいい、ただ主人公の信の黒目が小さい」とアドバイスを受けた。それで絵よりストーリーに重点を置いていたそれまでの姿勢を改め、絵に向き合った。そして、黒目を大きくすると、バランスを取るため全体のタッチや構成も変化し、単行本でなら第4巻あたりから躍動感のある絵になり、人気が出て初の読者アンケート1位になった[7]。
なるほど、確かに4巻以降の絵は抜群に躍動感出てきてかっこよくなってます!!
この話から、世の中にあるもので人気なものとそうでないものの品質の差って、そこまであるわけじゃなく、見た目やキャッチコピーこそが人気の差を生んでいるというのがよくわかりますね。
(メンタリストDaiGoもyoutubeで言ってた!ビジネスで成功するためのスキルで1番上位にくるのは、コピーライティング能力だって!)
というわけで、絵については、巻を重ねるごとに僕の中では克服されていきました。
2.についてですが、僕が学生の時に習った歴史では、始皇帝という人物は歴史上1,2を争うくらいの暴君という印象でした。
例えば、『焚書坑儒』による儒学者の大量生き埋めとか、『史記』に記載された司馬遷の人物評がその根拠。
秦王政の風貌を、準(鼻)は蜂(高く尖っている)、目は切れ長、膺(胸)は鷙鳥(鷹のように突き出ている)、そして声は豺(やまいぬ)のようだと述べる。そして恩を感じることなどほとんどなく、虎狼のように残忍だと言う。目的のために下手に出るが、一度成果を得れば、また他人を軽んじ食いものにすると分析する。布衣(無冠)の自分にもへりくだるが、中国統一の目的を達したならば、天下はすべて秦王の奴隷になってしまうだろうと予想し、最後に付き合うべきでないと断ずる[34][48]。
(出典:始皇帝 - Wikipedia)
不老不死を目指して水銀飲んでたみたいな話もあった気が。
以上のことから、ありえないくらいひどい人物で、こういう輩がトップの皇帝で君臨してた時代はほんとにかわいそうだな、くらいに思ってました。
しかし、色々調べると、始皇帝が実施した政策は後世に残るものが数多くあり、実は名君だったんじゃないかとの見方があるらしい。
例えば、封建制に変わって、以後2000年以上続けられる郡県制の礎を築いたとか、度量衡・通貨の統一、文字の統一で経済の活性化を促したとか。
まぁ、これらは歴史で習った記憶がありますが、例えば文字の統一って、統一させられた側からするとたまったもんじゃない気がします。。。
侵略してきた国からいきなり、『今日から今まで使ってた文字は廃止で、この文字を使うように』って言われてもねぇ。。。
文字って各民族のアイデンティティの象徴だったりします。
文字がなくなる、それはすなわちアイデンティティの消失を意味すると思います。
始皇帝時代を描いたフィクション映画、ジェット・リー主演の『ヒーロー』に、文字の消失に抵抗するシーンがあります。秦国兵士たちからの大量の矢が降り注ぐ中、それに動じず矢に打たれながらも書道を続ける様子があり、命をかけても文字を守る、なぜなら文字がなくなれば自分たちの魂も失うに等しいから、というのがとても良く伝わってきました。
マンガ『キングダム』では、7大国が隣国同士で小競り合いを続け、争いが絶えない状況が500年も続いており、これを無くすには国境を無くすのが是、と始皇帝が説いています。
例え武力であっても、各国を平定したうえで法による平等な統治を行うのだ、という始皇帝の熱い思いがドラマチックに描かれています。
(一方、敵対する呂不韋(りょふい)は、国境無くすのは同意だけど、武力ではなく経済力でやるべき、という主張をしています。個人的には呂不韋の主張に圧倒的に賛成しますが、秦の時代においては、短期間で国境を無くすやり方は武力によるのが最善だったのでしょうね。。。)
というわけで、誰もできなかった統一を1代で成し遂げた始皇帝は、時代により評価が分かれているようです。
儒教を重んじた漢王朝では、儒学者を生き埋めにした始皇帝を酷評してるし、古い慣習は悪だとして文化大革命を繰り広げてた毛沢東時代では、『批林批孔』として孔子批判の代わりに始皇帝を評価してるし。
時代によって見方が変わるのと、そもそも偉人と言われる人、素晴らしい点と悪い点、それぞれありますよね。
アインシュタインは学術的功績は素晴らしいけど、一方でひどい家庭内暴力をしていたらしいし、ブルース・リーはアジア系俳優の地位向上や格闘技に革命を起こしましたが、薬物依存だった、とか。
今後、始皇帝が暴君として評価された焚書坑儒などの出来事がどのように描かれるのかなぁと、気になるところではあります。
3.についてですが、同じ殺し合いでも『北斗の拳』は好きなんですけどね。。。ww
なんでかな、フィクションとそれなりの史実に則ったストーリーとの違いなのか。
秦の国が趙や巍の国に攻め入るのですが、他民族はいるものの、ほぼ同じ漢民族同士の戦いで、読んでて悲惨だなぁと思ってしまいます。
陸続きの国家の悲しいところですね、隣国と仲良くなれないのは2000年前も今も同じ。
反面、戦争が起きるとこんな悲惨なことが起きてしまうのだよ、と啓蒙してくれているマンガとも言えます。
というわけで、主人公が武功をどんどん挙げていって、将軍に成り上がるサクセスストーリーがメインですが、侵略される国の悲惨さを否が応でもイメージさせられてしまうので、何だか好きになれないな~、単純に面白いと思えないなぁ、というのが僕の率直な感想です。
とはいうものの、秦の武将、他国の武将が考える戦での戦略は確かに面白いです。
『デスノート』のエルvsライトみたい。
また、秦の時代に興味が持てたのも事実。
(今まで、中国史で一番好きだったのは清朝末期から文化大革命らへんまででした。)
1975年に中国で『睡虎地秦簡』なる竹簡が大量に出土されて、秦の時代の解明が進んでいる模様。
1975年といったら文化大革命の終わりごろですが、こんな歴史的遺産がよく破壊されずに残ったなぁと。
この『睡虎地秦簡』ですが、秦国の法律の一部が大量に記載されているらしい。
様々な事柄に対し、色んな規則が設けられていて、さながら仏教の戒律みたいww
人の支配は人ではなく、法によるべきとの始皇帝の考えからなのでしょうか、あまりに厳しすぎて短命で漢王朝に変わってしまったのかもしれませんね。
というわけで、紀元前221年に秦は統一王朝となりますが、その時代、日本の歴史って残ってないし、めちゃくちゃ面白いってわけではないですが、とても気になるので、今後も『キングダム』は読み続けようと思います。