上げ馬に野次馬

~茶と株と~ 茶道男子始めました。茶人になるまでの軌跡を綴っていこうと思います。お茶、和菓子をはじめとする日本文化の魅力を研究中の30代自称兼業投資家です。

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【マンガ】『美味しんぼ』から学ぶ菓子の基本 ~日本人が菓子の基本を忘れるようになった元凶は砂糖にある~

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今さらAmazonPrimeでドハマりしているマンガ『美味しんぼ』ですが、「お菓子」の根本とはなにか、を追究する回※があり、大変勉強になりました!

備忘録がてら、その内容を書いていきます。

 

※該当の回は、テレビアニメ版のエピソード116『究極VS至高 菓子対決』です。

 

 

1.『美味しんぼ』とは

■概要

1983年から『ビックコミックスピリッツ』(小学館)に連載されているグルメ漫画。

※だいたいの床屋に置いてあるイメージ

東西新聞文化部社員の山岡士朗を主人公に、食をテーマとしたストーリーが展開されています。

山岡士朗は、実の親である、芸術家であり美食家の海原雄山と敵対関係にあり、色んな場面で衝突します。なお、山岡士朗が所属する東西新聞は『究極のメニュー』を主宰していますが、これにライバル新聞社である帝都新聞が、海原雄山とタッグを組み、『至高のメニュー』を主宰することになり、新聞社対決と親子対決が合わせて行われることになります。

 

 

『究極のメニュー』と『至高のメニュー』は、あるテーマの元、味比べ対決をするのですが、そのテーマのひとつが「菓子」でした。

 

よく『グルメ』というカテゴリーだと、高くてお洒落な料理という感じで気取ってる(不味いものは食べてられないというような)印象を僕は持ってしまうのですが、『美味しんぼ』ではそういう描写はあまりありません。

どちらかというと、手間暇かけて作ることや客人の心を一番に考えること、農産物の輸入自由化に対する問題提起などが描かれており、大変興味深いお話が多いです。

※大量生産に対する食の安全も警鐘を鳴らしています。こういうのを見ると、スーパーで売っているだいたいの安い食品が買えなくなってしまいますが。。。

 

1話完結で大変気軽に見れる構成になっており、なおかつ食のうんちくが得られるので、とてもおもしろくて気に入ってます!!! 

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2.究極VS至高 菓子対決

究極VS至高の対決テーマは、海原雄山の発案から『お菓子』に決定します。

そんななか、唐山陶人先生(人間国宝の陶芸家であり、海原雄山の師匠)から、とあるお茶室に招待された海原雄山と山岡士朗。

ここで、海原雄山は『お菓子』をテーマとした背景を、菓子ブームが蔓延る日本を憂い、菓子とはそもそもなんであったか、お菓子の基本を考えてもらうため、と説明します。

 

対決当日、「至高のメニュー」側は、砂糖を使わない『干し柿』を菓子の基本として展開、「究極のメニュー」側は、菓子の基本は柿にあると捉えた上で、人間の甘さへの根源的欲求を、『樽柿』に砂糖やジンなどを加えた羊羹で表現しました。

 

 

結果、両者引き分けとなります。

 

3.菓子の基本とは

海原雄山は、干し柿に見た菓子の基本を以下のように説明しています。

実は今回の対決の主題を菓子にすることは、私の方から提案した。なぜなら、昨今の菓子がその基本というものを忘れているように思えたからだ。

日本人が菓子の基本を忘れるようになった元凶はまず砂糖にある。

サトウキビから作る砂糖は、明治以前は長崎からわずかに入る貴重品で、庶民が口にできるものではなかった。だから甘味を求めるのに、庶民はアマヅラ(甘葛)という蔓(つる)草の汁を煮詰めたり、あまくさの根から甘みを取った。

しかし、いずれも砂糖の甘さには遠く及ばなかった。

その甘いものに対する欲求を満たす手近なものは、柿を始めとする果物しかなかった。

ここに菓子の基本があるのだ。

そもそも、柿は中国が原産地で、平安時代に日本に持ち込まれた。その後、改良を加えて驚くほど多種の柿が作られるようになった。しかも柿は他の果物と違って干し柿として保存がきくので、大変貴重だった。

私は、水菓子としての果物と、いわゆる菓子との中間点、いわば菓子の原型が干し柿であろう考えている。

ただただ甘さだけを求めて、素材や原型が分からない『スイーツ』なるものに傾倒する日本の菓子ブームへの問題提起といえます。

 

なお、甘葛は、茶道文化検定のテキストにも

『枕草子』に「あてなる(上品な)もの」として「削り氷に甘葛入れて、新しきかまなり(銀の椀)に入れたる」と記されている。

とあります。 

人間には、甘いものへの欲求があり、それを菓子に求めていましたが、その菓子のルーツは、砂糖が大量生産できない時代は、柿などの果物※であった、また、蔓状植物などからなんとかして甘さを抽出したりしていたんですねぇ。

※もっと遡ると木の実など

 

審査員からは、「確かに干し柿の甘さはくどくなくて胃にやさしい。しかも適当にコクがある。」というコメントが出ます。

現代の過度に甘いお菓子は、菓子の基本を見失って暴走しており、もっと素材を生かし、製法を工夫すべきと言わんとしてますね。

 

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ただ、砂糖のおかげで、色とりどりの様々な姿形の和菓子が作れるようになったのも事実。この和菓子のおかげで茶道の世界観がより広がっているように思います。

基本を忘れない、過度に不自然な甘さに頼らない、といったバランス感覚が必要なんでしょうなぁ。

 

4.桃栗3年柿8年 ~おもてなしの心とは~

『桃栗3年柿8年』とは、物事の成就には時間がかかることのたとえとして使われる言葉です。

(ちなみに、これに続く言葉として、『人は100でも成りきらず』と教わりました。人間は成熟しきることはなく、常に未熟であることを肝に銘じて、日々謙虚にして精進すべきということですな。)

 

海原雄山の出した干し柿は、8年どころか15年かけて作った次郎柿(甘柿の中でも最も甘い柿)の木から生った実で作ったとのこと。

表面はさらりと乾いているが、中身はとろりとクリーム状となっており、「干し柿に15年なんて。。。」とアニメではコメントされてますが、手間暇かけて作ったこのおいしい干し柿こそ『おもてなしの心』を体現しているのではないでしょうか。

 

 

また、「究極VS至高」対決の前に、お茶室に招かれるシーンがあるのですが、ここで「最中」が出されます。

この最中には、マスカット(甘口の白ワイン「ソルテーヌ」に漬けたマスカット)が入っています。

最中の皮のパリッとした風味と、甘い香りのマスカットが調和し、とてもおいしいお菓子になっているとのこと。

しかし、この「最中」はマスカットの果汁で皮がすぐにふやけてしまうので、店では売れないと亭主は指摘されます。

ここで亭主は、せいぜいこの最中の寿命は5分だが、一番おいしい瞬間を味わってもらうために、出す間際に最中を作っているとのこと。 

『おもてなしの心』とはなんぞや、というのが良くわかるシーンと思います。

 

5.まとめ

このエピソードのポイントは以下です。

・人は甘さへの欲求を菓子に求めてきた。

・菓子の基本は果物にある。

・なかでも保存性の高い干し柿こそ菓子の原型と言える。

 

いつの間にか116話も見ていた『美味しんぼ』。

とてもおもしろいので永遠に続いてほしいなぁと思ってます。

 

※『美味しんぼ』はAmazon Primeから見れますよ! 

 

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