「中国人はアジアの病人ではない!」
カンフー映画ファン、特にブルース・リーファンにはお馴染みのシーンですね。
このドニー・イェン主演の映画「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」でも、このセリフが出てきます。
この映画、一言で言うと、
ドニー・イェンのブルース・リー好きを最大限表現した映画
といったところでしょうか。
この作品、1972年公開(日本公開は1974年)のブルース・リー主演の伝説の映画「ドラゴン怒りの鉄拳」の続編といった位置づけで、ここからストーリーはつながっています。
しかし、ストーリーは最後「?」という感じで、アクションシーンも中盤以降は飛び抜けてすごい印象はありませんでしたが、オープニングのアクションシーンはとにかくかっこ良い!!!
007もオープニングシーンのアクションはやたら気合いを入れて作ってますが、こっちのオープニングシーンの方が断然上ですね。完全に超えてます。
これだけでも見るべき!
では、感想を書いていきます。
1.基本情報
タイトル | 邦題 | レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳 |
原題 | 精武風雲・陳真 | |
公開 | 2010年 | |
上映時間 | 105分 | |
出演者 | ドニー・イェン スー・チー アンソニー・ウォン 木幡竜 AKIRA 等 |
|
製作国 | 香港、中国 |
ドニー・イェン47歳の時の映画です。
それにしては格闘シーンのキレは凄まじく、肉体も鋼のようで、恐るべし47歳です。
2.概要・あらすじ
一言で言えば、憎き日本人をやっつけたぜ!というストーリー
以下あらすじです。
1917年、第一次世界大戦真っ只中のフランス。
多くの中国人はヨーロッパへ労働力として派遣されており、連合国側の戦士として、戦場の最前線に主人公の陳真もいた。
なんとか戦地で生き延び、中国へ帰るが、この時戦死した仲間の名前で生きていくことを決める。(ここが「怒りの鉄拳」からのつながり。「怒りの鉄拳」では、日本人の陰謀により師匠である霍元甲(フォ・ユェンジャア)を殺されたことへの仇討ちを陳真が果たすのですが、最後、日本の憲兵隊に銃殺されたかと思わせるシーンで終わります。しかし、実際は生きていて、ヨーロッパで戦っていたという設定。その後中国へ帰るのだが、日本人は陳真を探し続けており、中国ではどうしても偽名を使わざるを得なかったというのが背景。)
中国へ帰国後、侵略を続ける日本軍へのレジスタンスとして活動する傍ら、情報収集のためにクラブ「カサブランカ」の役員となる。
一方、陳真の仇討ちにより父を殺された日本人大佐の力石毅(木幡竜が演じる)もこのクラブに出入りしており。。。
日本軍が作成した処刑リストをもとに、日本軍による中国人暗殺が続くなか、正体を隠し「仮面の戦士」として暗殺を阻止しようとする陳真。
やがて正体が判明した陳真と力石の対決が始まる。。。
※予告編はこちら
3.感想
①かっこ良すぎるオープニング
冒頭シーンは、フランスでドイツ軍に攻められる中、最前線で戦わされている陳真含む中国人たちが描かれています。
フランス軍が諦めて退却するなか、防空壕に取り残された中国人たちがドイツ軍の機関銃での攻撃を受けています。
ドイツ軍の弾が陳真の仲間に命中したことをきっかけに、陳真が意を決してドイツ軍の機関銃へ立ち向かいます。
それなりに離れた距離から機関銃で攻撃されますが、的を絞らせないよう縦横無尽に走りながら、パルクールの技術で障害物を華麗に飛び越えながらドイツ兵へ立ち向かいます。
このシーンの躍動感、銃撃を浴びる中、障害物を飛び越えてドイツ兵へ近づいていく様、無謀と思える状況でアクロバティックなアクションが繰り広げられます。
このスピード感、アクロバット感はとてもすごい!!!
ドニー・イェンならではです。(ワイヤーアクションだけど)
このオープニングのアクションシーンはとても見応えがあります。
それだけに中盤以降が。。。
中盤以降もドニー・イェンならではの格闘シーン(1回のジャンプで何回蹴りができるんだっていうくらい蹴りが繰り出されたり)なのですが、このオープニングシーンと比べると見劣りしてしまいますね。
なんだろうな、ドニー・イェンの全身を使ったアクションが分かるようにもっと全体像を映して良いのに。。
やっぱり、ドニー・イェンのアクションで、特に素晴らしいアクションだったのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』ですね。
これは忘れられません。
黄飛鴻(ジェット・リー)VSラン提督(ドニー・イェン) の格闘シーン
ジェット・リーの棒VSドニー・イェンの布棒の対決。
最高級の武術を極めた同年代の2人が、一番動ける年齢で実現したこの映画はやはり色褪せることのない最高傑作でしょう。
※この映画の日本語吹き替えだと、ジェット・リーの声は池田秀一さんがやってるんですよね。名探偵コナンの赤井秀一ファンとしては、もう最高です!!
②ブルース・リー好き度合い
前述した「仮面の戦士」は、まさにグリーン・ホーネットのカトーの格好。
グリーン・ホーネットは、アメリカで放映されていたテレビ番組で、この中で登場するカンフーの達人のカトー役をブルース・リーがやっていました。
ブルース・リーファンを公言しているドニー・イェンにとって、ぜひやってみたかったのでしょう。
また、怪鳥音(アチョーって声)、ヌンチャク、白衣装(陳真といえば白いスーツ)もブルース・リーそのまんまって感じ。
(そういえば、この白い衣装に憧れて僕も白いカンフースーツを横浜中華街で買ってもらったなぁ)
というわけで、ブルース・リー好きなら「ああ、これね」って頷けるポイントがたくさんあります!
③ストーリーは残念
ストーリーは特に複雑なサスペンス要素やひねりはありません。
そもそもドニー・イェンのアクション映画にシナリオの秀逸さを期待してはいけませんね。
かっこいいアクションが見れればそれで十分です。
宿敵の力石を倒してそれで終わっとけば良いのに。。。
最後、女性の日本人将校が車から降りてきて、迎えた日本兵から「川島少佐、どうぞ」と言われるシーンがあります。
これは、川島芳子※を描いているのでしょうか。
この一瞬しか出てこないし、そんな演出いらんのに。。。
※川島芳子は清王朝の皇族(愛新覚羅家)であり、実在の人物。日本軍の工作員にさせられ、戦後裏切り者(漢奸)として銃殺刑にされた。
④精武門の歴史
前述しました「ドラゴン怒りの鉄拳」(1972年)という映画は、中国が日本に侵略される中、上海で日本人の陰謀により師匠を殺された弟子の陳真(チェン・ジェン)が、復讐のために日本人を倒していくというお話です。
これをブルース・リーが演じ(陳真の役)、大ヒットしました。
この陳真は架空の人物ですが、この師匠は霍元甲(フォ・ユェンジャア)と言い、実在した人物なのです!!!
1909年には、上海精武体操学校(上海精武体育会の前身)を創設する。
(出典:Wikipedia)
と書かれています。
これが「ドラゴン怒りの鉄拳」における「精武門」(精武館)なんですね。
なお、Wikipediaに記載されているように、日本人の陰謀により霍元甲が殺された(毒殺)というのは完全に俗説であり、映画を分かりやすくするためのフィクションです。
ちなみに、この霍元甲、中国の方と関わりのあるお仕事をされている方は、絶対に覚えておいた方が良いです!!!
この人物を知ってるだけで、話が抜群に弾みます!!!
(実際、会社に勤めている協働者の中国の方と、霍元甲の話をしてかなり打ち解けることができました。)
この霍元甲を描いた映画は、ジェット・リー主演の「スピリット」があります。
格闘シーン満載でとても面白い映画に仕上がっています。
※この映画、これまたブルース・リーファンを公言している台湾人歌手の大御所「ジェイ・チョウ」がエンディングテーマを歌っています。カラオケで歌えるように、昔必死で覚えてましたww また、ジェイ・チョウはブルース・リーファンが高じて、現代版の『グリーン・ホーネット』にカトー役で出ています。羨ましすぎる!!!
なお、「怒りの鉄拳」では、日本人から中国人は数々の嫌がらせを受けており、中でも「東亜病夫」(アジアの病人)と書かれた看板を与えれるという大変屈辱的なシーンがあります。
(最終的には、ブルース・リーが日本人道場破りをして、この看板の「東亜病夫」と書かれた紙を日本人に食わせる、というシーンがあります。)
実際は、調べてみるとこの「東亜病夫」の言いだしっぺはイギリス人のようですね。
ほんと帝国主義は良くないな。
⑤怒りの鉄拳の系譜
陳真(チェン・ジェン)を主人公とした「怒りの鉄拳」シリーズは、実は多くの香港アクションスターがこれまで演じています。
ジャッキー・チェンの「レッドドラゴン」、ジェット・リーの「フィスト・オブ・レジェンド」、そしてドニー・イェンの「レジェンド・オブ・フィスト」。
アクションスターへの登竜門のような位置づけになっており、日本で言うところの「忠臣蔵」といったイメージでしょうか。
それくらい伝統のあるアイコン的存在となっています。
僕は、このジェット・リー 主演の「フィスト・オブ・レジェンド」を何回も見ました。日本人では、倉田保昭、中山忍が出ています。
このとき、中山忍が陳真のことをずっと「チャン・チャン」と呼んでいました。
そのため、僕のなかでは陳真はずっと「チャン・チャン」でした。
(あの時はインターネットも黎明期で、発音の真偽を確かめるすべがなかった。。。)
⑥スー・チーの日本語は無理がある
中国人の振りをしてスパイ活動を行う日本人の役をスー・チーがやっています。
「李香蘭」をモチーフにしてるとか。
しかし、本来日本人という役なのですが、スー・チーの日本語はとてもたどたどしく、全く日本人には見えません。
(それなのに、スー・チーが日本語を話す箇所は字幕がないため、何言ってるか分からない部分があります。)
韓国映画だと、日本人役を全て韓国人がやることが多いので、この傾向は顕著です。
(アメリカドラマ「高い城の男」もそうなんだよな~。日系アメリカ人の日本語だから結構不自然に聞こえる。)
それに比べたら、ちゃんと日本人俳優も出ているこの作品はまだマシですね。
⑦出演している日本人俳優
木幡竜という、中国でも活動する俳優さんが「力石大佐」を演じています。
サッカーの長友選手のような顔立ちです。
中国語を話すシーンがありましたが、流暢に聞こえましたが中国の方にはどう聞こえてるのでしょうか。(やはりたどたどしく聞こえてるのかな。)
昔、チョナンカンって番組で、元SMAPの草なぎ剛が得意の韓国語をよく話してましたが、同じ予備校に通っていた韓国人の友達が「全くダメ」って言ってたのを思い出しました。パッチムが全然できてないと。。。
外国語習得は難しいですね。。
また、EXILEのAKIRAが脇役ですが、出ています。
アクションスターの登竜門の作品に出れるなんて羨ましいなぁ
⑧これで反日?
「反日要素高め」というレビューをよく見ました。
日本人の極悪非道ぶりがやりすぎらしい。
まぁでも、これくらいしょうがなくないか?と思います。
日本も、「元寇」の作品作るなら、これくらい極悪非道な演出にするでしょうに。
僕が最も好きな本「ワイルド・スワン」(ノンフィクション)には、1938年以降の満州国の錦州における、当時の小学校(日本占領下)の様子が描かれています。
当時、満州国で発禁本になっていた中国人作家の本を隠れて読むために、場所を探していた作者の母の友達が、間違って日本軍の武器庫に入ってしまい、警報を鳴らしたために日本軍に捕まってしまいます。
結局、さんざん拷問された挙句、作者の母を含む全校生徒の前で、この友達は処刑(銃殺)されてしまいます。
この時、同情して嗚咽をもらした日本人の「田中先生」までもが校長からさんざん蹴られてしまいます。
侵略していた頃の日本がいかに残虐だったかが分かります。
なお、この本「ワイルド・スワン」は、清朝末期から文化大革命後までが描かれていますが、大部分が毛沢東の政策による悲劇を綴った本であり、都合が悪いため現在の中国で発禁となっています。
そのため、中国の意向を反映して、日本統治時代を意図的にねつ造して、日本の行為を残虐な表現にしたとは思えず、正直にありのままを書いただけであり、実際はこのレベルでひどかったんだと思います。
なので、映画の演出もそうなるわなぁと思ってしまいました。
4.こんな方におすすめ!
この映画はこんな方におすすめです!
○ブルース・リーが好きな方
○とにかく格闘アクション映画を見たい方
以上、感想でした~
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